こんにちは、はまみらいプロジェクトの宇野です。
今回の記事テーマは『緊急輸送道路』です。このワード、聞いたことありますか?
緊急輸送道路とは、地震などの大規模災害発生後に人員や物資を円滑・確実に輸送することを目的として指定された道路路線です。自治体や道路管理者によって緊急輸送道路に指定された路線については災害対策が優先して進められます。
地震発生時、車を運転している人はどのような対応をとればよいのでしょうか。そして、緊急輸送道路はどのように活用されるのでしょうか。見ていきましょう。
1. 運転中に大地震が発生した場合の対処法は?
まずは、運転中に大地震が発生した場合の対処方法を整理しておきましょう。
STEP1 減速・停車
ハザードランプを点灯させ、周囲の車に注意を促しながら減速し、道路の左端に停車します。慌てて急ブレーキをかけないようにしましょう。
STEP2 情報を入手
スマートフォンやカーラジオで災害情報を入手します。また、カーナビや地図アプリを用いて、道路以外で駐車できる場所と安全な避難先を探しましょう。
STEP3 車をおいて退避する
先ほど調べた場所に駐車し、車を置いて退避します。この際
①窓を閉め
②エンジンを切り
③エンジンキーをつけたまま
④ドアロックをせず
車を離れましょう。これらは後の緊急輸送の話にもつながります。
①、②は車内への引火予防のため、③、④は必要に応じて車を移動できる状態にしておくためです。やむを得ず道路上に車を置いて退避する場合も同様にして退避します。
大地震発生時はご自身の車をある意味「捨てる」ことになります。しかし人命には変えられません。また、一般車両が道路を走行すれば、緊急車両の通行や物資の輸送が妨害されかねません。どうか、大地震が発生したときには車を手放す勇気を持ってください。
2. 災害時、緊急輸送道路はどうなる?
大規模災害発生時、一般車両においては緊急輸送道路の通行が制限・禁止されます。このような看板を道路で見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ナマズのキャラクターが描かれた「緊急交通路」の看板です。「地震災害時、一般車両通行禁止」の旨が記されています。
(厳密には『緊急輸送道路』は円滑な輸送のため災害対策を強化する道路路線の枠組みで、通行制限を設ける道路路線の枠組みには『緊急交通路』という呼称が用いられます。しかし緊急輸送道路と緊急交通路は大部分で一致しているため、この記事では一貫して「緊急輸送道路」を用います。)
前項でも述べたとおり、大地震発生後は道路上、とくに緊急輸送道路上には車を残さないようにしましょう。
また、緊急輸送道路上には『防災対応型信号機』が設置されているところもあります。防災対応型信号機は非常用電源を搭載しており、災害発生時の交通規制に対応した現示モードに切り替えることができます。
3. 緊急輸送道路はどこにある?〜横浜を例に〜
神奈川県の緊急輸送道路には次の2種類があります。
第1次緊急輸送道路
高規格幹線道路、一般国道等で構成する広域的ネットワーク及び港湾等に連絡する路線で緊急輸送の骨格をなす路線。
第2次緊急輸送道路
第1次緊急輸送道路を補完し、地域的ネットワークを形成する路線及び市町村庁舎等に連絡する路線。
横浜市内の緊急輸送道路の路線図は横浜市のWebページから閲覧できます。
今回は、横浜国立大学や横浜駅に近い第1次緊急輸送道路として、県道13号線の三枚町交差点〜高島町交差点の区間を見てみましょう。この区間がどのような理由で緊急輸送道路に指定されているのか、実際に歩いて考察してみました。
三枚町交差点付近
三枚町交差点です。この近くには羽沢横浜国大駅や貨物駅の横浜羽沢駅、第三京浜の羽沢ICがあります。隠れた輸送の要衝と言えるかもしれません。写真左上の高架は環状2号線、右上の高架は相鉄・JR直通線(東海道貨物線)です。
このあたりは4車線道路となっており、災害時の輸送を担える主要路線であることがうかがえます。
さっそく1枚目のナマズ看板を発見しました。よくある青い案内板の裏側に掛けられています。
第三京浜の羽沢ICです。第三京浜も緊急輸送道路に指定されています。災害時には第三京浜で運んできた荷物を横浜に下ろす、というシチュエーションも考えられるでしょうか。
片倉町入口交差点付近
片倉町が近づいてくると、『片山うさぎ山公園』なる公園を見つけました。この公園は広域避難場所に指定されており、大地震による大規模火災などから身を守る場所となっています。
片倉町交差点から少し新横浜方面に入ったところには片倉消防出張所があります。大きな消防署ではありませんが、緊急車両が出動する場合はやはり緊急輸送道路を使うことになるでしょう。
消防署の隣には中丸小学校があります。この学校は震災時の避難場所、地域防災拠点に指定されています。
三ツ沢付近
三ツ沢上町駅ユーザーならおなじみ、三ツ沢公園入口の交差点です。
この三ツ沢公園も広域避難施設に指定されています。
三ツ沢公園の近くには移転した横浜市立市民病院があります。緊急輸送道路沿いに大きな病院を設けることで、災害時の円滑な傷病者輸送を目的としているのではないでしょうか。
三ツ沢公園前交差点の歩道橋で2枚目のナマズ看板を発見。
下り坂の途中にある軽井沢中学校も災害時避難場所に設定されています。
グラウンドの緊急輸送道路に面した門は緊急車両出入口に設定されていました。これも緊急輸送道路の枠組みに合わせたものなのでしょうか。
岡野交差点付近で3枚目のナマズ看板を発見。このあたりは横浜駅にかなり近く人流も交通量も多いため、地震発生時は大きな混乱が予想されます。緊急交通路として空けることができるでしょうか。
今回の区間の終点、高島町交差点に到着です。このあたりまで来るとみなとみらいや桜木町も近いですね。
今回は三枚町交差点から高島町交差点まで5キロほどの行程でしたが、その短い区間にもたくさんの防災・輸送関連施設が立地していましたね。物流拠点や避難場所、消防署や病院など、災害時に必要になる施設を結ぶ基幹的な輸送路として、緊急輸送道路は重要なポジションについているのです。
4. おわりに
いかがでしたでしょうか?
この記事では、緊急輸送道路とは何なのか、運転中に大地震が発生したらどうすればよいのかについて説明し、横浜の道路を例に緊急輸送道路の設定理由について考察しました。
この記事を機に、緊急輸送道路や大地震発生時の輸送について皆さんの意識が高まれば幸いです。
参考文献
都市科学部都市基盤学科 宇野滉真
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