はじめに
こんにちは!はまみらいプロジェクトの伊藤と小野寺と藤田です。
突然ですが皆さん、横浜駅が雨で浸水してしまったらどうなると思いますか?
横浜駅を訪れた経験がある方なら簡単に想像できるかもしれませんが、地下空間が多く、人も多い横浜駅が浸水してしまったら、大変な被害が出てしまいます。
でもご安心ください!!横浜市は駅を、そして皆さんを守るため、なが~い年月をかけて対策をしています。今回はその浸水対策の全容に迫るため、横浜市の方にインタビューをしてきました。
1.横浜駅が浸水する…?内水氾濫ってなに?
インタビューの内容に入る前に、雨で浸水する仕組みについて見ていきましょう。
雨で浸水する流れには、2パターンあります。1つは外水氾濫、もう一つは内水氾濫です。今回は主に内水氾濫対策についてインタビューしていますが、2つの違いについて解説します。
まず、外水氾濫は下画像一番右の図のように、河川堤防を超えて水があふれ出す水害を指します。一方、内水氾濫は、中央の図のように河川に排水するはずの水が、河川の増水により市街地に溜まり浸水するものや、一番左の図のように、短時間に降った雨の下水排水能力が追いつかないときに、市街地が浸水してしまうことを言います。
引用:気象庁 「避難勧告等に関係する諸情報(洪水・浸水)の技術について」
さて、この内水氾濫は、
・平坦な土地
・路面がアスファルトで覆われており、水が地下にしみ込まない都市部
・低地
で発生しやすいと言われてます。(参考:BCP「内水氾濫・外水氾濫とは?両者の違いや取るべき対策を解説」)横浜駅は、全ての条件に当てはまると思いませんか?そこで横浜駅周辺の内水ハザードマップを見てみると…
横浜駅周辺は内水氾濫で浸水してしまうことが分かります。黄色の2~20cm浸水や水色の20~50cm浸水の箇所が横浜駅近くに見られますね。地盤沈下しているビブレ方面は50cm~1mの浸水が予想されています。
これは大変です。20cmの浸水だって地下に流れ込んでしまえば大問題です。
2.横浜市職員の皆さんに横浜駅を守る工夫を聞いてみた!
ということで、我々3人は内水氾濫対策について調べ始めました。…しかし、膨大で細かな対策、素人が調べても掬いきれません。
そこで、横浜市環境創造局下水道マネジメント課の皆さんにご連絡したところ、なんと取材をさせていただくことになりました!!貴重なお時間をありがとうございます!!
今回インタビューさせていただいたのは、横浜市環境創造局下水道計画調整部部長早川正登さん、下水道マネジメント課係長の中島章さん、山崎祐輔さんのお三方。皆さん誇らしげに、熱意を持って内水氾濫対策について語ってくださいました。
↑横浜新市庁舎にて集合写真。新市庁舎、とてもきれいでびっくりしました、こんなところで働いてるなんてすごい…
3.水との戦いで幕開けした横浜の下水道
それでは、年表に沿って横浜の内水氾濫対策の歴史を見ていきましょう。
実は、横浜は浸水対策を第一目的として下水道の整備が始まっています。普通、下水道というとトイレなど生活用水の排水をイメージされる方が多いかと思います。しかし横浜では、関東大震災と第二次世界大戦でこれ以前に整備していた下水道が焼かれてしまった後、1954年に横浜駅周辺の流域を浸水から防御するために下水道の整備が始まりました。この時期、横浜駅周辺が栄えてきたにも関わらず、この地域で地盤沈下が発生し、潮の満ち引きで周辺が沈んでしまうという状況があったためです。
この時期に整備されたのが桜木ポンプ場です。
横浜の海沿いエリアに降った雨水は、地下の下水道を通り桜木ポンプ場に集められ、ポンプによって地下から汲み上げられ、ポンプ場の北を流れる石崎川に排水されるようになりました。桜木ポンプ場の本格稼働は1970年に始まったとされています。
4.水との戦いの歴史
桜木ポンプ場が本格的に稼働されるようになった後、平沼ポンプ場や楠ポンプ場などのインフラが整備されました。そして桜木ポンプ場が稼働し始めてから約30年後、2004年に台風22号が横浜駅にやってきました。下の写真のように横浜駅はこの台風で浸水し、甚大なダメージを受けました。横浜市役所の方曰く、この台風が横浜駅周辺の内水氾濫対策の1つのターニングポイントだそうで、ここからより一層、内水氾濫に力を入れるようになったとのことでした。
そしてこの5年後の2009年に横浜は開港150周年を迎えます。これに伴い、更なる国際化に対応できる横浜を目指すという目標を掲げ、「エキサイトよこはま22」というまちづくり計画が策定されました。エキサイトよこはま22は、まちづくりビジョン、基盤整備の基本方針、まちづくりガイドラインという3つの要素から構成されており、このうち基盤整備の基本方針に今後の横浜駅周辺の内水氾濫対策の基本目標が掲げられました。この目標は以下のように記載されています。
地下街を有したセンターゾーンにおける内水の安全度向上(浸水に対するまちの安全度向上) →30 年に1回程度の降雨(74mm/hr(※))に対応する整備 (将来目標は、50 年に1回程度の降雨(82mm/hr(※))に対応する計画)
※エキサイトよこはまより抜粋(「基幹整備の基本方針」エキサイトよこはま22 横浜市)
この文を簡単に説明すると、横浜駅が30年に1度の確率で起こるような大雨に対応できることを目標とするということです。横浜駅はもともと、10年に1度の確率で起こるような大雨には対応できるよう整備をしてきたので、もうワンランク上の目標を立てたというわけです。そしてゆくゆくは50年に1度の確率で起こるような大雨にも対応できるようにしていこうという目標も立てました。
この後、2014年に非常に規模の大きい、台風18号が横浜駅にやってくるのですが、エキサイトよこはま以降の整備含め横浜駅は非常に浸水に強い駅となっていたので、大きな被害は無かったそうです。
この翌年、下水道法が改正され、浸水被害対策区域制度が制定されました。この制度は浸水被害対策区域において行政が民間事業者と連携して防災対策を行うための制度のことで、横浜市は2017年に全国で初めて、横浜駅周辺地域をこの浸水被害対策区域に指定しました。
これにより現在、横浜市役所は民間事業者と協力して横浜駅周辺の内水氾濫対策を進めています。また下水道法が改正された同年に水防法も改正されており、「水位周知下水道」に関する制度が創設されました。民間事業者との協力や水位周知下水道に関しては記事の後編で詳しくお話ししてるのでそちらも是非見てみてください!
最後に現在横浜市が進めている内水氾濫対策についてご紹介します。横浜市は横浜駅周辺の雨水をそのまま海に流せるようにトンネルを掘り進めています。このトンネルは20210年から施工が開始され、2030年あたりから稼働が始まるそうです。また今年から横浜市の公式サイトで横浜駅西口周辺の下水道管内の水位情報(4か所)を公表する取り組みを開始しています。民間にも情報開示を行うことで民間への防災意識を高めています。
この記事を通して横浜駅は内水氾濫対策として様々な取り組みをしているんだなぁと知っていただけると幸いです。
ここからは最近始まった取り組みである「民間との協力による内水氾濫対策」の話に移っていくのですが、その話は「 横浜駅の内水氾濫対策について聞いてみた!~後編:民間との協力で浸水対策パワーアップ~」でお楽しみください!!
大雨の時確認できるおしゃれな○○?横浜駅を利用するならば通るあの場所に、そんな対策がされていたなんて…?!ぜひ後編もご覧ください。
※最後に、年表で使用させていただいた写真のURLをまとめて載せさせていただきます。
・昭和41年の台風4号:日本の川 - 関東 - 鶴見川 - 国土交通省水管理・国土保全局
・平成16年の台風22号: 災害情報 水害レポート
都市科学部都市基盤学科 伊藤 美輝
都市科学部都市基盤学科 小野寺 菜乃
都市科学部都市基盤学科 藤田 光
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