横浜駅の内水氾濫対策について聞いてみた!~後編:民間との協力で浸水対策パワーアップ~

 こんにちは!はまみらいプロジェクトの伊藤と小野寺と藤田です。こちらの記事はタイトル通り前編後半に分かれた内の後編となっております。前編を読まなくても楽しめる内容になっていますが、前編を読んでから後編を読むと記事の面白さが2倍になるので前編を読んでから後編の記事を読んでいただきたいです!

 前置きが長くなりましたが、今回は前編で予告があったとおり「民間との協力による内水氾濫対策」にスポットを当てて行きたいと思います。こちらの方でも市役所の方から資料などには載っていないお話を沢山伺いましたので、早速紹介していきます!

1.下水の水位をお知らせする仕組み、水位計(横浜市下水道水位情報)

 横浜市では、今年の6月から横浜駅周辺の横浜駅周辺の4箇所の下水道の水位情報を2021年6月からHP上で公開をされています。このように下水道の水位情報を公開している自治体は、他にはありませんので、珍しい取り組みであると感じました。

横浜市下水道水位情報の今の水位の様子を表している図(図1)

引用:横浜市下水道水位情報

 横浜市下水道水位情報の水位の推移の図(図2)

引用:横浜市下水道水位情報

 まず、この横浜市下水道水位情報の水位計の仕組みについて説明をしていきます。

 この水位計は、水中でのセンサーへの水圧の変化を利用して測定をしています。また、この水位計では、通常時は、10分に1回、雨が降って水位が上昇してきている時は、1分に1回更新しています。さらに、このHP上での水位計を見ることで、今の下水道の水位の状況が安全か危険かが一目で分かるように工夫されています。具体的には、マンホールの蓋の所まで水位が上昇するとHPの画面上でアラートが出るようになっており、水位情報に「!」マークが出て、赤信号になるようになっています。

 このように水位計の水位を公開している理由を述べていきます。

 横浜駅には地下街に入る階段がたくさんあり、ロータリーの近くで浸水が起きた時に地下街に水が入ってしまったら非常に危険な状態になってしまいます。

 下水道の水位情報提供の取り組み前は、川の水位をHPで見たり、気象庁等からの降雨の予想をもとに止水板の設置を行っていました。

 2021年6月から、地下街で働いている方々は今まで参考にしていた情報に加えて、下水道からの水の吹き出しの情報(水位計の情報)を見ることで、地下街の止水版の設置の判断基準に使っているとのことでした。

 この水位情報提供の取組みは、先ほども述べましたように、民間の方からの意見を取り入れ、そして、事業者と話しながらできたそうです。また、数値だけやグラフだけだと地下街の人が分からないので、図1のように漫画絵をつけて、どのぐらいの水位になっているのか分かりやすく表示するようにしたそうです。


2.民間施設の下に隠れている!?貯留施設の設置

 建物敷地内の雨水貯留施設の設置についてお話していきます。

 平成27年に下水道法が改正され、頻発する局地的な大雨等に対して、都市再開発等のまちづくりに併せて、迅速で効率的な浸水対策を推進するために、公共下水道管理者と民間の事業者との連携による浸水対策を可能とする制度が創設されました。

そして、横浜市では平成29年1月25日に全国で初めて、横浜駅周辺の約30haを「浸水被害対策区域」に指定し、局地的な大雨の頻発等に対して、官民連携による浸水対策の推進をすることが可能となりました。

 具体的には、先日完成した「JR横浜タワー」の雨水貯留施設があります。

(写真:JR横浜タワー)

 エキサイトよこはままちづくりガイドラインでは、「センターゾーンの大規模開発(敷地面積5,000㎡以上)において、建物敷地内に雨水貯留施設の設置」を基本ルールとして定めており、対象となる貯留施設に対して、国と自治体(横浜市)がそれぞれ3分の1の補助金を出すことで、事業者の負担は3分の1で済む仕組みとなっており、事業の推進を促しています。

 ここで、貯留施設にかかるお金の3分の2が税金から出され、3分の1のお金を事業者負担で済ませている理由を2つ述べていきます。

 1つ目の理由としては、治水対策は行政がやるものというイメージがあるにも関わらず、貯留施設を建設しないと、横浜市は30年に1回の大雨までしかハードでは対応ができていないので、民間の方々に50年に1回の大雨までハード対策をすることで納得していただくためだそうです。

2つ目の理由としては、貯留施設を設置することによって事業者の方々だけが安全になるのではなく、横浜駅周辺全体が安全になるため、公共的な要素もあるからということがあるそうです。

 次に、雨水貯留施設の維持管理について述べていきます。貯留施設を作るときの規則として、「施設の対応年数を踏まえた期間に関しては施設の機能を事業者さんが維持管理しなければならない」という規則があるのでその期間は施設の管理者に管理をしてもらっています。また、期間を過ぎた後、取り壊しなどを検討している場合には横浜市に連絡する形になっています。

 最後に、先ほど述べたJR横浜タワーの雨水貯留施設のみ今の段階で横浜駅周辺の雨水貯留施設として完成していますが、これから先も横浜駅周辺も再開発が行われていくはずなので、その時に雨水貯留施設を作っていただくことで、横浜を内水氾濫による災害から強い街にしたいと考えているそうです。


3.民間事業との協力について

 今回の記事ではここまで(2.と3.で)民間事業との協力について説明をしました。民間事業との協力は大きく分けて、①「横浜駅周辺の下水道の水位情報の提供」(2.参照)、②「建物敷地内の雨水貯留施設の設置」(3.参照)、の2つがあります。

 横浜市の担当者は、①横浜駅周辺の下水道の水位情報提供システムについて、年に1、2回ほど横浜市の担当者も会議に参加し、地下街管理者から水位計の話や意見を聞くこと等を行っているそうです。

 また、②雨水貯留施設について、実際にJR横浜タワーの建設の際に設置をしてもらいましたが、街作りのルール自体を地権者の方や自治会の方と横浜市で一緒に作ってきたこともあり、理解をしていただけているのかなと考えているそうです。

 これから、さらに行政と民間が繋がってより強い下水道対策ができると、期待ができるような話をお聞きすることができました。


4.さいごに

 今回は、横浜市下水道マネジメント課にインタビューに伺いに行き、横浜市の内水氾濫の歴史から、今の最新の状況まで詳しく学ぶことができました。

 横浜市の浸水対策の念入りさには本当に驚きました。地下ではたくさんのインフラが私たちの生活を守ってくれている横浜を、誇りに思いました。(伊藤)

 今までは、市の方で確保した場所を用いて内水氾濫対策を行って来ていましたが、最近では、民間との連携も非常に重要になっているということを学ぶことができました。これからも行政と民間が内水氾濫対策で互いに協力しあい、より災害に強くなった横浜ができることを楽しみにしています。(藤田)

 本やインターネットで調べるだけではわからないようなお話を聞くことができ、非常に貴重な体験でした。毎日利用している横浜駅が、自分が思っていた以上に綿密な内水氾濫対策を行っていることに驚かされました。今後は横浜駅を利用するときに今まで以上に横浜市の方に感謝しながら利用したいと思います。(小野寺)


 最後に、今回取材を快く応じてくださった、横浜市環境創造局下水道事業マネジメント課の早川さん、中島さん、山崎さん、本当にありがとうございました!


都市科学部都市基盤学科 伊藤 美輝

都市科学部都市基盤学科 小野寺 菜乃

都市科学部都市基盤学科 藤田 光

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