横浜の街に見る多様な建築技法

 皆さんこんにちは、はまみらいプロジェクトの野中、渡邊、中山です。

 横浜といえば、江戸時代に開かれた港町として有名ですよね。そんな歴史のある街で、多くの読者の皆さんがたくさんの建造物を見たことがあるのではないでしょうか。今回は、横浜の建築物を建築技法という観点から調査してきました。



1. 調査概要

 今回はみなとみらい21地区のバスに乗って、日本大通りエリア・山手エリア・馬車道エリアの3カ所を実際に探訪して様々な建築物を調査してきました。この記事では主に建築技法の部分に焦点を当てて取り扱いたいと思います。


 建造物とは、見た目が荘厳で観光名所にもなることが多いですよね。でも、その建物に使われている建築技法などを知っておくことで、より楽しめると思いませんか?これを読んだ皆さんに、横浜の建築物について知見を深めてもらい、「もう一度行きたい!」とか「今まで興味なかったけど、行ってみよう!」と思ってもらえることを願います。



2. 日本大通りエリア

 まず、日本大通りエリアの建築を紹介していこうと思います!


 この日本大通りエリアは、数々の歴史的建造物が残る横浜において、"名建築激戦区"と言っても過言ではない…というほどに多くの素敵な近代建築が立ち並んでいます。横浜好きの方、歴史好きの方、建築好きの方、皆さんに是非訪れていただきたいエリアです。


 そして、このエリアにはトランプのカードの通称をもつある有名な近代建築があります。

"横浜三塔"、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか!


キングー神奈川県庁本庁舎(写真左)

クイーンー横浜税関(写真中央)

ジャックー横浜市開港記念会館(写真右)

 これらの建築物はそれぞれキング・クイーン・ジャック、それらの名にふさわしい特徴をもったつくりとなっています。ちなみに、これらの名の由来は寄港する外国の船員たちがその容姿をトランプのカードになぞらえた、という説が濃厚だそう。


 今回はこの3塔のうち、ジャック、横浜市開港記念会館にスポットを当て、その様子を覗いてみましょう!

 横浜市開港記念会館は、横浜開港50周年を記念し、横浜市民からの寄付を募り建設された記念建造物です。竣工当時、1917(大正6)年にはめずらしい設計コンペでつくられました。

 壁の赤いレンガと白い花崗岩がはっきりとしたコントラストをみせるいわゆる「辰野式フリークラシック」の外観。辰野、辰野…。たしかに辰野金吾の代表作、東京駅を彷彿とさせますね。このエリアを歩いているとまるで少し昔の西洋を訪れたかのような、そんな感覚に陥ります…!

 中に入ってみます。(一般の方も無料で中に入ることができます。しかし、老朽化に伴う保存改修工事のため令和3年12月から令和6年3月まで休館だそう…)

 中では素敵なステンドグラスを見ることができます。南側の階段室にある「ポーハタン号」を描いたスタンドグラスは関東震災後につくられたものですが、創建時のデザインに基づいて描かれているそう。和田英作という画伯の絵画とあわせて、この横浜市開港記念会館の見どころです。

 外観も内装も、自由な装飾が施されており、その姿はジャックという名にふさわしいですね。


 NHK大河ドラマ『青天を衝け』で話題の渋沢栄一も横浜と深い関わりがあります。日本大通りエリアの近代建築を堪能しながら、横浜の発展を支えた渋沢栄一ゆかりの地を巡ってみてはいかがでしょうか!



3. 山手エリア

 次に紹介するのは、山手エリアです!

 この山手エリアは、もともとは外国人の居留地であり、今もなお数多くの洋風建築の建物が残されています。そして今回は、その中で2つの建物をピックアップしていきます!


 まずは、山手111番館です!

 山手111番館は、ジョン・エドワード・ラフィン氏の邸宅として大正時代の1926年に建てられました。ワイン坂通りに面した広い芝生の前庭と、港の見える丘公園のローズガーデンが見下ろせる作りになっています。

 この建物を設計したのはJ.H.モーガン氏で、玄関前の3連アーチに彼の意匠の特徴が見られます。また、建物は白壁に赤色の瓦屋根で、地階がコンクリート、地上部が木造建ての寄棟造りとなっています。

 館内は撮影禁止なので、残念ながら中の様子を写真でお見せすることはできませんが、吹き抜けのホールや食堂、居間などが配置されており、おしゃれな装飾が施されていました!ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか?


 次に紹介するのは、山手234番館です!

 山手234番館が建設されたのは、昭和初期ごろです。当時、大きな被害を出した関東大震災の復興事業の一環で、民間業者によって外国人用の共同住宅(アパート)として建設されました。

 この建物の建築様式は、同一形式の4つの部屋が、合理的かつコンパクトにまとめられていることから、震災後の典型的な洋風住宅であることが伺えます。また、簡素な仕様ではあるものの、上げ下げ窓やよろい戸、煙突などが採用されており、「モダン」な生活様式を見ることができるだけでなく、「異国情緒」を味わうこともできます!


 また、山手234番館の向かい側にはレトロな雰囲気をまとった電話ボックスがあります。

 中には、普通の公衆電話が設置されていますが、その上には昔の電話を想起させるベルと送話器も設置されています。この公衆電話ボックスから友達などに電話をかけてみるのも面白そうですね!!



4. 馬車道エリア

 最後に、馬車道エリアでまず紹介するのはこちら、神奈川県立歴史博物館です!

 どうでしょうか。正面の2本束ねたコリント式の大オーダーやバランスの取れた八角形ドームなど美しく荘厳な見た目だと思いませんか?


 本建物は、妻木頼黄が設計し1904年に完成された横浜正金銀行をその前身としていますが、そこで使われた建築技法はネオ・バロック様式です。記事を読んでいる皆さんの多くは、「え、何それ?」って思ったのではないでしょうか。


 これは19世紀の半ばに現れた、かつてのバロック様式を復興させようとする動きで、さまざまな基本様式をバロック化して豪華にデザインしたものです。そしてその特徴は、特に豪華で彫りが深い動きのある彫刻にあります。実際に神奈川県立歴史博物館を見てみると、見事な彫刻が施された三角ペディメントがあります。また、柱の上部にも立派な彫刻が彫られていて、ゴシック様式の特徴を見ることができますね。

 ちなみに、日本で他にネオ・バロック様式が用いられている建築物として、迎賓館赤坂離宮があります。訪れたことがある方も多いとは思いますが、今一度行ってみて神奈川県立歴史博物館との共通点探しなんかをしても面白いのではないでしょうか。


 次に紹介するのはこちら、YCCヨコハマ都市創造センターです!

 これは、横浜市が2004年から推進している創造都市構想の拠点施設の1つです。具体的には、デザイン・アートなどのクリエイティブ分野と産業や経済、地域などを結び付け、個人や企業、また子供から年配の方までたくさんの方々が利用できる事業やプログラムを実施して、横浜の産業振興・地域活性へと繋げていく役割を果たしています。

 どうでしょうか。創造都市構想の拠点らしく、クリエイティビティが感じられる見た目だと思いませんか?

 この建物は、西村好時が設計し1929年に完成された第一銀行横浜支店をその前身としています。そして、用いられた建築技法は古典主義様式です。その特徴は、ギリシャ建築とローマ建築にその起源があることで、外観に円柱があることラスティケーションと呼ばれる壁の石積みの強調表現が特徴です。

 実際に第一銀行横浜支店を見てみると、正面に4本の重厚な円柱があります。さらに外壁についても、その石積みがとても分かりやすくなっています。


 ちなみに、今は1階がカフェになっており、ドラマの撮影でも使われているようです。ドラマの撮影場所に行けるなんて、それだけでもテンションが上がってしまいますね!



5. おわりに

 今回私たちは、みなとみらい21地区の3つのエリアに注目して、それぞれのエリアの建築物について建築技法の観点から紹介しました。みなとみらいの中でも、さまざまな建築技法が用いられていることをお伝えできたと思います。この記事を機に皆さんが、建造物の建築技法に注目していただけたり、新しい一面を知るきっかけになったりすれば幸いです。


経営学部経営学科 野中優成

都市科学部都市基盤学科 渡邊瑛大 

都市科学部都市社会共生学科 中山明音

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